「そらがおちてる」
さらがおちてる、のだと思った
雨上がりの道、おニューの水色のレインコートを着込んだ君は
言うが早いか、ぱしゃぱしゃと跳ね上げ
一目散に路地の真ん中、大きな水たまりへと駆け寄って覗き込んだ。
真剣な眼差しをした君に追いついて上から覗き込むと暗くなって夜空になった、
まさか、と空を見上げると晴天で、もう一度下を向くと、
「空が落ちてる」
「そら」
その声に私は周りを見回した。
「そら」
「空が落ちてる」
空の切れ端は水たまりの顔に戻り
ただ水面が私と空を映したまま
波紋を揺らしている。
「そら」
一本道に隠れる場所なんてない。
「空が」
電柱の陰にもレインコートは見えない。
「落ちて」
見つかったのは夜中知らない街で
それでもどこかから落ちたように
潰れた君の着ているレインコートは
青空の色をしていた
「る」